コーヒーの基本プロセス(ウォッシュド/ナチュラル/ハニー)

今回はコーヒー豆の「プロセス」について解説します。
店頭で見るコーヒー豆の名前を見ると、どれも国名・地域名の後に不可解な単語がついています。

”ウォッシュド”、”ナチュラル”、”ハニー”、”アナエロビック”etc.・・・洗ってあるコーヒーとは一体?という感じですが、こちらは全てコーヒープロセスの名前です。

トレーサビリティ(追跡可能性:生産から流通までの過程を明確に示すこと)の意味もありますが、プロセスによってコーヒーの味が大きく変わるため、基本的にコーヒーショップでは記載がされています。

プロセスを知っておく意味

焙煎度が同じ場合、プロセスは、コーヒーの味を最も大きく変化させる要因となります。ゆえにコーヒー好きな人ほど「どんなコーヒーが好き?」と聞くと「xxプロセスのコーヒーが好き」と返ってくる気がしています。
コーヒーの味わいの方向性を決める最重要ポイントであり、生産国や農園よりもインパクトが大きいため、
自分の好きなプロセスを知ることで、より自分に合ったコーヒーが選びやすくなります

 

プロセスとは?

プロセスとは、コーヒーチェリーと呼ばれるコーヒーの実から豆を取り出し、焙煎前の「生豆」と呼ばれる状態にするまでの流れのことです。

コーヒーは収穫段階では果実です。構造を簡単に説明すると、外から果肉、粘着層(ミューシレージ)、殻(パーチメント)、豆の順番で層になっています。そのため果肉を取り除き、粘着質を取り除き、殻を割って初めて、コーヒー豆となるのです。
またコーヒー豆はぶどうやみかんなど他のフルーツ同様、水分を多量に含んでいます。なのでそのままだとカビが生えますし、もちろん焙煎などできません。コーヒー豆の”乾燥”も、工程上大事になってきます。

 

プロセスの流れ

上記の理由で、コーヒー豆のプロセスは「収穫、選別、果肉除去(パルピング)、発酵、乾燥、脱穀」という流れが基本です。先ほど説明した通り、コーヒー豆の構造とプロセスは連動します。

①収穫、選別
②果肉除去→”果肉部分”を取り除く
③発酵→”粘着層”を分解する
④乾燥→品質を安定させる
⑤脱穀→”殻”を割って豆を取り出す

ここまでやって初めて、生豆と呼ばれる焙煎前のコーヒー豆の状態になります。

なおコーヒー豆のプロセスは、”精製”と言われたり”プロセス”と言われたり、”生産処理”と言われることもあります。どれも意味は同じなので深く考えなくても大丈夫ですが、個人的には”精製”というと不純物を取り除く感があるので、私はプロセスとそのまま言うことが多いです。英語では一般的に"process"と呼ばれます。中国語では”處理法(Chu Li Fa)”、同じですね。

またプロセスという言葉はこの一連のプロセスを指すのですが、一般的にはプロセス=発酵部分を中心とした話、になることが多いです。発酵方法がプロセスごとに最も異なる点であり、かつ決定的に味わいに変化をもたらすからです。

 

ナチュラル

ドライプロセス、または日本語で非水洗式とも呼ばれます。中国語では日曬(Ri Shai)です。最も伝統的で、シンプルなプロセスです。

ナチュラルは、果実をつけたまま天日干しにして発酵・乾燥させる方法です。果肉除去(パルピング)を行わず、収穫後は果肉がついたまま乾燥させます。

①収穫、選別
②乾燥(発酵)
③脱穀

ワインを作る時のぶどうもそうですが、果肉がついた状態で果物を放置すると、発酵が起こります。なので果肉除去/発酵のプロセスを飛ばし、直接乾燥工程へ。そのまま自然発酵=ナチュラル、ということですね。

果実の風味が豆に移りやすく、フルーティーな味わいが楽しめます。他プロセスに比べて口当たりが濃厚で、酸味が控えめなのも特徴。エチオピアだと主にベリーやジャムのような甘い味わいに、中南米だとトロピカルフルーツのような味わいとなることが多いです。ワインや果実酒のような香りがするのもナチュラルが多いです。
ナチュラルは濃厚でフルーティーなコーヒーや、赤ワインのような鼻から抜けていく果実感の強い香りが好きな方におすすめです。

シンプルでありながらも、実は時間と手間がかかる方法で、果実ごと乾燥させるため、適切な乾燥環境が必要です。また、天候に大きく依存するため、安定した品質のコーヒーを生産するのが難しいプロセスでもあります。
ただし上質なナチュラルは発酵感も少なく、クリーンで滑らかな質感を持つ素晴らしいコーヒーとなります。

>>ナチュラルの豆はコチラ

エチオピア チェルベサG1 ナチュラル

>>特殊ナチュラル(ナチュラル+α)の豆はコチラ

ニカラグア ラス・デリシアス アナエロビックナチュラル

 

ウォッシュド

ウェットプロセス、もしくは水洗式とも呼ばれます。余談ですが中国語では水洗(Shuishi)です。同じですね。
収穫後の果肉部分を機械で除去し、水に浸けて発酵させる方法です。水の中で粘着層を落とす=水で洗う、ことからウォッシュドと呼ばれています。
約1-3日ほど水の中で発酵させ、ヌメリが取れた段階で水洗い、その後はナチュラル同様、天日干しで乾燥させて完成です。

なおウォッシュドは水を使うため、フローター判別(水に浮く豆=未成熟豆、として除去する)が可能。そのため選別がしやすく、ナチュラルよりも欠点豆が少なくなる傾向があります。

①収穫、選別
②果肉除去
③水中で発酵
④乾燥
⑤脱穀

ウォッシュドのコーヒーは、明るい酸味と雑味のないクリーンな口当たりが特徴で、豆本来の味が最も綺麗に表れるプロセスです。ゆえに産地の特徴や品種の差が出やすく、ナチュラルよりもバラエティが広いように感じます。
エチオピアではアールグレイや花の香りが際立ち、ケニアはベリー感とジューシーな柑橘、グアテマラではリンゴや甘いチョコレート感など、産地によってフレーバーは様々。ただしどれもすっきりして飲みやすいのが特徴です。
ウォッシュドは、紅茶やフレーバーティーのようにスッキリした味わいや、すーっと飲める爽やかさのあるコーヒーが好きな方におすすめです。

ウォッシュドは水を多く使用すること、かつプロセスで使用した水は産業廃棄物となるため、水源が豊富かつ、適切に水が処理できる環境が必要です。ウォッシュドができる地域は限られており、ケニアや中米地域で盛んなプロセスですが、上記の理由から今は中米を中心に多くの農園が後述するハニープロセスへの転換を行なっています。

>>ウォッシュドの豆はコチラ

グアテマラ エル・インヘルト ウォッシュド

ケニア ガタイティCWS AA ウォッシュド

>>特殊ウォッシュド(ウォッシュド+α)の豆はコチラ

コロンビア ラ・エスペランサ ゲイシャ ハイブリッドウォッシュド

コロンビア エルパライソ ライチロット ダブルアナエロビックウォッシュド

インドネシア アルールバダ ウェットハル

 

 

ハニー(パルプドナチュラル)

ナチュラルとウォッシュドの中間に位置するプロセスです。
ブラジルではパルプトナチュラル、その他地域ではハニーと呼ばれています。名前は違えどプロセスは同じです。なお中国語では蜜處理(Mi Chu Li)、蜜ですね。
今やハニーの方が有名になっていますが、元々はブラジルの独自プロセスで、コスタリカに渡りハニーと呼ばれ始めました。響きも美味しそうで印象づけやすかったというマーケティング的側面もあるようです。

果肉部分を取り除く部分はウォッシュドと同じですが、その後は水中発酵せず、粘着層を残した状態で天日干しするのがハニープロセスです。発酵は乾燥段階で起こります。

①収穫、選別
②果肉除去
③乾燥(発酵)
④脱穀

果肉を残さないため比較的すっきりした味わいになりますが、粘着層が残っている分、近しい風味は残します。ゆえに中間。ウォッシュドとナチュラルの特徴を併せ持ったコーヒーの誕生です。なお粘着層(ミューシレージ)がスペイン語でMiel("はちみつ"と同じ単語)と呼ばれているため、ハニーという名前になりました。

ハニーで作られるコーヒーは、すっきりしながらもフルーティーで甘い風味が特徴です。水中発酵を行わないため水が豊富でなくてもよく、汚水も少ないため環境に優しい方法とされています。
ハニーの種類によってウォッシュドに近いもの、ナチュラルに近いものなどいろいろありますが、基本的にはどちらの特徴も残しながら、丸い口当たりになることが多いです。特にコスタリカのハニーが有名ですが、今はだいたいどの産地でもハニープロセスは見られます。
バランスの良いコーヒー、甘さのある柔らかく飲みやすい味わいが好きな方におすすめですが、種類によって大きく違うので、チャンスがあればぜひ色々試していただきたいプロセスです。

なお始まりとなったブラジルでは、ナチュラルは乾燥に時間がかかる=天候などのリスクが増えるため、時間短縮を模索していた中で生まれたプロセスです。果肉部分を取り除いた状態で乾燥に入るので、乾燥スピードはかなり短くなります(ナチュラル:1ヶ月ほど/ハニー:10日ほど)。

 

>>ハニーの豆はコチラ

ブラジル パッセイオ パルプトナチュラル

エチオピア イディド デサレン・ヒジョ ハニー

ルワンダ キリンビCWS ハニー

>>特殊ハニー(ハニー+α)の豆はコチラ

雲南 デーホン イーストファーメンテーションハニー

  

最後に

プロセスを知ると、コーヒー豆を選ぶのがグッと楽になります。
この記事ではナチュラル、ウォッシュド、ハニーの、コーヒーの基本となる3つのプロセスを紹介しましたが、他にも続々と新しいプロセスが生まれている他、ここで紹介した3種も、それぞれの農園で発展を遂げ、今では細かい分類ができ始めています。

全て解説すると細かくなり過ぎてしまうので、それらは次回の記事にしたいと思います。

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